無借金経営を背景に、新たなニーズに柔軟に対応。

昭和8年、お茶の製造、卸から出発してから現代まで、バラエティに富んだ商品構成は”お客様のニーズにフレキシブルに対応したする”とういう明確な企業スタンスからの必然性がある。

すべてが、時代のニーズに対応してきた産物

私の祖母は茶町の坂庄物産の娘で、昔からその会社は、お茶も扱っていましたが椎茸、山葵の卸が商いの中心でした。そこからいろんなお店が分離・独立していったのですが、当社もその一つ。現在私どもでは、川根茶の製造・販売以外にもお茶関連の菓子類を始め、コーヒー・紅茶などを取り扱う専門店の経営、キーホルダーやファンシーグッズの販売、ソフトクリームの販売まで手掛けるなど扱い品目が広がっています。ある意味、商社的な側面も併せ持った会社ですが、それも坂庄物産の血が色濃く残っているからかもしれません。ただ、これだけははっきり言えます。それは、一見ジャンルが広すぎて一貫性がないように思われるかもしれませんが、すべては時代のニーズに柔軟に対応してきた結果が、今の前田園だと言う事です。

観光業界とのつながりが、商品の広がりのキッカケ

創業当時から、お茶の卸がメインだったこと。松坂屋は静岡店を開業させたのは昭和8年ですが、そのオープン後間もなくして、松坂屋プライベートブランドとしてお茶を提供しています。その後、昭和12年に、浜松に松菱が開店しますが、ここにも川根茶を提供し続けてきました。静岡県の2大商圏に、百貨店を通じてお茶を卸してきた。これが当社のスタートです。一方、観光業界とお付き合いが深いというのが、強みでもありました。というのも、少し前までは社員旅行を始め団体旅行が盛んな時代でしたから、旅館などの観光施設にお茶を置いて頂くだけで、お土産として大量販売に繋がるからです。地域の人には百貨店が、そして県外の客には観光旅館が販売窓口になる。ですから、お茶だけで十分やっていけた。でも旅館などが「お茶だけではもったいない。何か目新しい品も卸してくれ」と。そこで、姉さま人形や向かい鯛、賤機焼きなど静岡民芸品を扱うようになったのです。

車社会と共に伸ばしてきたキーホルダー事業

車社会に入ってから、旅行のあり方が、団体旅行からプライベートな物に変化してきています。当然、消費も個人嗜好に「なってきています。この傾向は、マイカーが普及し始めてから、特に顕著になってきましたね。お土産を買うのも、旅館からドライブインになっていったのです。そんな変化の中で、民芸品に重点を置いても仕方がない。そこで扱ったのが、茶飴などお茶に関する商品やキーホルダーだったわけです。車を持っている人のほとんどは、キーホルダーなどに興味を示しますからね。そこで、最初はメーカーから仕入てドライブインなどに卸していた。でも、どこでも買えるものでは満足しません。そこで、富士山など静岡にまつわる物やキャラクターなどのオリジナル商品を考え、発注することになった。東名高速道路が出来た後も、SA(サービスエリア)やPA(パーキングエリア)でのお土産消費は伸び続けて、20年くらい前には年間で約10万個の販売数を誇っていましたから、この着想は成功したと言っていいでしょう。一見、お茶と関係ないように見える商品も、当社にとっては観光業界との付き合いの中で必然的な物なのです。

社員とお客様の両方が生んだ chai cafe(チャイカフェ)

私が社長になったのは10年前の事ですが、当時は一番大変な時期でした。観光関係が良くなかった上に、平成13年には松菱が破綻ですからね。普通なら社員のリストラとなるのでしょうが、状況が悪くなったからと言って、今まで当社で頑張ってきた方々を切って捨てるようなことはできません。なんとしても新しい事業展開が必要だったのです。それに、長い間浜松で川根茶を販売していましたから、自然と前田園のファンが根付いていて「これからどこで前田園さんのお茶買えばいいの?」という声も耳に届いてくるわけです。両方を両立するためにも、店頭販売が頭に浮かぶのですが、ただお茶を売るだけでは先がない。新しいアイデア、コンセプトを持って始めないと失敗するだろうということは感じていました。そこでJC時代からお付き合いいただいてるコーヒー乃川島の川島社長に相談したんです。そうしたら、「うちのFCで始めると、前田さんの主力商品であるお茶を販売できなくなる。うちの商品が魅力的だと思うなら、紅茶やコーヒー、輸入食品を卸すから独自でショップをやってみたら」といってくれ、お茶と紅茶・コーヒーそして輸入食材など、お茶の嗜好に応えられるコラボレーション的なお店にしようと決断しました。それがchai cafe(チャイカフェ)です。ちょうど、浜松サティの跡地に浜松プラザウエストが出来るときで、そこの1階に11坪程度の空きがあったので、タイミングも良かったですね。

お客様の嗜好品に応える。それが前田園

chai cafe(チャイカフェ)前田園の入っているビルのセンターコートにフリースペースがあり、休憩できるようにテーブルがおかれています。そこをお客様が楽しく利用できるように「何かテイクアウトできる物を」という要望があり、当時では例のない川根煎茶のソフトクリーム販売を始めたのです。”るるぶ”や地元のタウン誌などが取り上げてくれたり、ナムコの全国の名物ソフトクリームを集めるイベントで、静岡県代表の形で紹介されたりしましてね。煎茶独自の程良い苦みも受け、開店当初から好評です。そのchai cafe(チャイカフェ)も、今年開店5周年を迎え9坪ほど増床し、川根茶のコーナーと紅茶・コーヒー等のコーナーを明確にわけ、よりコンセプトのしっかりしたお店になったと思います。当社の取扱商品がバラエティに富んでいるのは、今お話したように、すべて時代の要請、お客様のニーズにお応えしてきたからです。また、次々と新しい手を打ってこれたのは、社風とも言える無借金経営があるからです。この信頼される経営姿勢をベースに、これからも、出発点である静岡茶の愉しみ方を広めながら、多様化するお客様の嗜好に応えていける会社でありたいと思っています。